車は大好きですが、このように細かい事まで知らない私としては大変に勉強になります。
2021年の夏、全国各地で大雨による被害が多発しています。
雨が降っている際の運転で活躍するのがワイパーですが、一般的に「水滴を拭きとっている」印象があります。
しかし、実際には単純に拭き取っているだけではないといいますが、どのような仕組みなのでしょうか。
【画像】あんな所にワイパーが!? 油膜をそのままは危険? な様子を見る!
雨の日に活躍するワイパーは、ただ水を拭き取っているだけではなかった
ワイパーの形式は、もっとも一般的なのが右スイング式のワイパーです。
また、観光バス車両などで採用されている左右両スイング式ワイパー、路線バスに多い縦型両スイング式などのバリエーションがあります。
そのほか、左スイング式やシングル形状、トリプル式などはレアタイプです。
ワイパーのもっとも重要な役割といえば視界確保であり、視界を確保するため、フロントウインドなどのガラス面を左右に拭う動きをしますが、ただ水をふき取っているのではありません。
定期的な動作によってガラス面に付着した水滴を拭いながら、ガラスの表面に薄く均一な水の膜をつくっています。
そうすることで外からの光をまっすぐに通し、にじんだり、ブレたりしない、良好な視界を得ることができるのです。
均一な薄い水の膜をつくるには、カーブしたウインドガラスに対してワイパーが均一に押しつけられなくてはならず、ガラス面に接するゴムと、そのゴムを均一にガラス面に押し付ける金具という構造になっています。
風雨にさらされ、直射日光を浴びる場所にあるワイパーは、1年間で東京ドーム約7個分の面積を拭くほど使われているともいわれます。
そしてフロントウインドには、水滴以外に砂や虫、雪、氷などが付着することも少なくなく、それをきれいに拭うため、ワイパーは思いのほか強い力でガラス面に押し付けられており、ゴムの特性であるしなやかさは日々、劣化しているのです。
これまでスポンジなどゴム以外の素材を検討したメーカーもあったようですが、柔軟性や繰り返しの摩擦、圧力、紫外線などへの耐久性、そして屋外の気温に耐えられる耐熱性、さらにはウォッシャー液のアルコールや界面活性剤への耐性から見てもゴムがベストだという結果に落ち着いています。
ワイパーの劣化による視界不良を防ぐため、日本ワイパーブレード連合会(ワイパーメーカー10社からなる団体)では、年に1回のワイパーの交換を推奨しています。
使用期間に限らず、ガラス面に筋状の跡が残ったり、拭いたときにワイパーブレードがビビったり、水のにじみや拭きむら、金属のサビやガタガタ音、ゴムの変形やひび割れが出たら交換のサインです。
洗車時にワイパーを雑巾などで強く拭くと、ゴムのコーティング剤が取れてしまうこともあるので、必要以上には拭かないことをおすすめします。
良好な視界の確保は、安全運転の第一歩です。ワイパーの状態はこまめに確認し、交換時期などを守って、しっかりとメンテナンスしたいものです。
ワイパーは1人の女性がきっかけで誕生した?
ワイパーの誕生には、ひとりのアメリカ人女性が深くかかわっています。
その女性とはメアリー・エリザベス・アンダーソン(1866年-1953年)。アラバマ州で生まれた彼女はディベロッパー、牧場主、ブドウ栽培者として忙しく働くバイタリティ豊かな女性だったようです。
そんな彼女が、1903年の冬、ニューヨーク市で路面電車に乗ったときにワイパーの原案を思いつきました。
彼女が見たのは、悪天候のために、運転手がたびたび電車を止めてフロントガラスについた雪や氷を取り除く光景。
そうして視界を確保しなければ、電車を進められないのは当然ですが、あまりに頻回だったため、ついに運転手はフロントウインドを全開にして運転をするはめになったのです。
メアリーは地元に戻ると、運転手がフロントウインドの雪や雨を車内での操作で除去できる装置を地元の工場に試作させました。
そして、木とゴムでつくったアームにバネを仕込んだものを窓の外に設置し、車内にあるレバーで操作する仕組みをつくったのです。
これは、一度の操作で左右に往復して雨や雪を除去するもので、現在のワイパーの基本動作の元になっています。
基本構造は100年以上変わらないが、日々進化しているワイパー
そして1903年、この装置に17年間有効な特許が認められ、彼女はこの装置が自動車メーカーに喜んで受け入れられると考え、積極的に売り込みましたが結果は惨憺たるものでした。
ワイパーの動きのせいでドライバーが注意散漫になり、事故を引き起こす危険があると考えられ、普及しないまま1920年に特許が切れてしまったのです。
しかしその後になって、自動車産業が飛躍的に発展すると、彼女の設計を利用したワイパーが自動車に装備されるようになり、1922年にはキャデラックが自動車メーカーとして初めてワイパーを標準装備しています。
こうしてワイパーはクルマにとってなくてはならないものになっていきましたが、初期のワイパーは手動式で使いづらいものだったようです。
エンジンの動力を利用する真空式ワイパーが開発され、便利にはなりましたが、クルマが減速するとそれに合わせてワイパーの動きも遅くなるという欠点もありました。
この問題を解決したのがドイツの部品メーカー、ボッシュです。1926年、現在の製品と基本的に変わらない原理に基づく電気モーターを使ったワイパーが誕生しました。
さらに1960年代には一定時間ごとに自動で動く「間欠式ワイパー」が誕生。20世紀初頭に誕生したワイパーはさまざまな面で進化を重ねてきているのです。